とても綺麗で面白かったですが、気になる点も多い
世界観やデザインは最高です。一部ステージの美しさには目を見張るものがあり、好きな時に探索できるようにセーブデータを分けたほどです。開発は台湾のディベロッパーが行ったようですが、日本人が見た時に違和感があるトンデモ日本のような描写は一切なく、綿密な実地調査や時代考証を行なって作り上げたことが伝わってきました。美しいがゆえにおぞましい、のキャッチコピーに恥じない素晴らしい出来だと思います。これだけでもフルプライスで買った価値があったと感じました。
また音楽については今作は山岡晃氏が全編を担当した訳ではないようですが、どれも素晴らしい楽曲ばかりです。日本が舞台ということから今までの作品には無かった和風テイストなフレーズが散見されますが、そのどれもがサイレントヒルらしいものとなっています。12月に発売されるサントラが楽しみです。
周回に関してはサイレントヒル自体が元々マルチエンディング形式なので仕方ないとは思いますが、後述の劣悪な戦闘システムと相まってやや苦痛でした。しかし周回を重ねるごとに隠されていた真実が明らかになっていくスタイルを周回前提であるサイレントヒルというゲームにうまく落とし込んでいると思います。各文書ファイルをメニュー画面から確認できれば自分で色々考察する際に便利だと思うので、できれば実装して欲しいですね。後これは無理だとは思いますが、設定資料集のようなものが出ればとても嬉しいです。
サイレントヒルといえば謎解きですが、今作の謎解きは正直言って微妙かなと思います。あまりにも解けないのでネットで答えを調べましたが、答えを見てもなぜこれになるのかが分からない謎解きがいくつかありました。カカシの謎解きと深水家の紋章の謎解き、狐の大和絵の謎解きです。ヒントがあまりにも抽象的というか、どうとでも取れるものが多いと思います。
発売前にサイレントヒルfはソウルライクでは?という意見に対しプロデューサーが反論していましたが全くもってその通り、ソウルライクではなくソウルライクの出来損ないです。プレイヤーと敵の機動力のバランスが取れておらず、一対一なら問題ないですが多対一の展開が多いのには閉口しました。
そもそもサイレントヒルにスタミナ管理などのアクション性を求める層がどれくらいいるのかが疑問ですし、同プロデューサーはソウルライクではない理由として「スタミナの概念は『サイレントヒル3』にも存在していたし、集中ゲージ最大で放てる「渾身の一撃」システムは『サイレントヒル4 ザ・ルーム』におけるチャージ攻撃を彷彿とさせる」などと宣っていましたが、SH3には今作のように強制的な多対一の戦闘を強いられるシーンはほぼ無かったと記憶していますし、SH4が当時あまり評判の良い作品ではなかった理由の一つとして、そういった戦闘に特化したゲームシステムを採用した点が挙げられると思います。
また、中途半端にスタミナなどのゲージを可視化する割にはボスの体力ゲージは表示しない点も気になりました。さらに舞台が狭い路地だったり日本式の家屋であるにもかかわらず、プレイヤーの武器が壁に当たると攻撃が中断されるという無駄にリアルなシステムに関しては擁護のしようがありません。
一部で話題になっていますが日本語吹き替えのクオリティは最悪です。せっかくの素晴らしい世界観とストーリーがこれで全部ぶち壊しになったと言っても過言ではありません。この規模のトリプルAタイトルのゲームでここまで酷い吹き替えの作品は記憶にないレベルです。お姉さんの声だけはまともでしたが、それ以外は酷すぎるか、周りが酷すぎてマシに感じるだけかの二種類でした。
少しキャストを調べると半数くらい俳優か舞台俳優の方を起用しているようですが、普通にプロの声優を起用して欲しかったです。これに関しては本当に残念でした。